2021/05/26

地域で広がる医療格差と経済格差

地域ごとに特徴があると思います。観光地や人口・人柄など各地で異なるものは多いです。医療においていえば地域差はなく、全国で均一な医療を受けられるとされています。しかし、実際はどうでしょう。医療には地域差があり、それにより恩恵を受けている人と弊害を受けている人がいるのです。今回はそんな医療における地域格差について紹介していこうと思います。

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厚生労働省が示す日本の医療体制

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日本の医療制度は厚生労働省が所管しており、国民皆保険とフリーアクセスを基盤に、世界的にも高い保健医療水準と平均寿命を実現していると評価されています。フリーアクセスとは、地域や身分に関係なく全国どこの医療機関でも受診できる制度であり、病院8,493施設、診療所100,461施設という体制がそれを支えています。一方で、年金・医療・福祉を含む社会保障給付費は昭和25年以降増加を続け、2017年には一人当たり120万円を超えました。背景には少子高齢化があり、とりわけ団塊の世代が75歳以上となる「2025年問題」により医療・介護費の急増が見込まれています。

地域医療構想と制度改革の柱

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社会保障制度を持続可能なものにするため、2014年に医療・介護総合確保推進法が整備されました。消費税増収分を活用した新基金の創設、病床機能の分化・連携、在宅医療の推進などが柱となっています。医療機関は高度急性期・急性期・回復期・慢性期といった機能を都道府県へ報告し、各自治体は地域医療構想を策定します。また地域医療支援センターの法的位置付け、在宅医療と介護の連携強化、特別養護老人ホームの重点化、低所得者対策の拡充、高所得者の自己負担2割化など、費用負担の公平化も進められました。さらに特定行為を担う看護師研修制度の創設、医療事故調査制度、医療法人制度の整備、介護人材確保策の見直しなども盛り込まれています。

拡大する地域間格差

日本では経済・教育・所得など多様な格差が存在しますが、医療と直結するのが地域格差です。高卒有効求人倍率は東京都4.4、愛知2.54、大阪2.25と大都市圏で高い一方、青森0.17、沖縄0.21、高知0.24と大きな差があります。地価や所得水準も首都圏が高く、2001年時点で東京都と沖縄県の一人当たり所得には2倍以上の差がありました。雇用機会と賃金の差は人材流出や失業率の上昇を招き、結果として生活の質や医療アクセスにも影響を及ぼします。

所得と健康の相関

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大和総研の分析では、所得と健康には明確な相関が示されています。世帯年収200万円未満では肥満率が男性約40%、女性約25%であるのに対し、600万円以上では男性約25%、女性約20%でした。低所得層では低コスト高カロリー食に偏りやすいことが要因と考えられています。また、年収200万円未満世帯では健康診断未受診率が男女とも約40%強と高く、600万円以上では男性約15%、女性約30%にとどまりました。受診しなかった理由として「自己負担が高い」「仕事が忙しい」といった経済的要因が挙げられ、生活優先による健康意識の低下が示唆されています。

地域医療格差解消への課題

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地域医療格差は、住民の経済力や健康意識に加え、医師・歯科医師不在の僻地の存在といった供給面の課題も抱えています。地域枠による医師育成の取り組みはあるものの、十分とは言えません。自治体主導の健診助成制度の拡充や、地方で医療従事者が働きやすい環境整備が求められています。入院医療が難しくなる中、在宅医療の重要性も増しており、住み慣れた地域で24時間体制の医療を提供する体制づくりが今後の鍵となります。

まとめ

日本は国民皆保険とフリーアクセスにより高水準の医療を実現してきましたが、少子高齢化と社会保障費増大という大きな課題に直面しています。その中で地域医療構想や制度改革が進められていますが、地域間の経済格差や所得差は健康格差にも直結しています。医療の持続可能性を確保するためには、制度改革と同時に地域格差の是正と予防的取り組みを進め、日本全国どこでも質の高い医療を受けられる環境を整えることが不可欠です。