2020/12/15
日本人の死因は悪性腫瘍(がん)、心疾患、脳血管疾患の順となっています。これらは通年を通しての結果ですが、1年の中には季節性に死亡率が上下するものもあるのです。冬に起きやすい、ヒートショック。この言葉の意味について深く知っている方は少ないと思います。今回はヒートショックについて皆さんにご紹介していきたいと思います。
ヒートショックは、急な気温差によって血圧が大きく変動し、心臓や血管の病気が悪化する現象です。特に入浴前後に起こりやすく、そのまま浴槽で溺れてしまうケースもあります。実際、家庭内の浴槽での溺死者数は年々増えており、冬場の事故として無視できません。 冬はリビングが暖かい一方で、脱衣所や浴室は外気に近い温度まで冷えやすく、昔の家屋構造やタイル床なども重なって、ヒートショックが起きやすい環境が整ってしまいます。
血圧は、血管が縮んだり広がったりすることで変化します。暖かい部屋では血圧は安定していますが、寒い脱衣所で裸になると体温を守ろうとして血管が収縮し、血圧が上がります。 その状態で急にお湯に浸かると、今度は体温を下げようとして血管が一気に拡張し、血圧が急降下します。この短時間で起きる大きな血圧の上下が、ヒートショックの正体です。
血圧には「上(収縮期)」と「下(拡張期)」があり、この組み合わせで正常かどうかが判断されます。測る場所によって基準は異なり、家庭で測る家庭血圧は診療室血圧よりも少し低い基準が使われます。 高血圧を放置すると、脳出血などの脳血管疾患、狭心症や心筋梗塞といった心臓病、さらには腎臓病につながることがあり、まさに「万病の元」といえます。
ヒートショックは誰にでも起こり得ますが、特に注意が必要なのは、65歳以上の高齢者や高血圧・糖尿病・不整脈のある人です。 また、熱いお風呂が好きな人、長風呂をする人、飲酒後に入浴する人、浴室に暖房がない家庭もリスクが高くなります。本人だけでなく、血縁者にこれらの病気がある場合も注意が必要です。
対策の基本は「急な温度変化を減らすこと」です。 お風呂の温度は41℃以下を目安にし、手足から徐々にお湯に慣らします。入浴時や出るときも、ゆっくり動くことが大切です。 さらに、脱衣所や浴室を暖める工夫が効果的で、暖房機器の設置や、シャワーで浴室を温めてからお湯を張る方法も有効です。住宅環境によっては、床材や設備を含めたリフォームも予防策になります。
ヒートショックは、特別な病気や珍しい事故ではありません。冬のいつもの入浴習慣の中で、誰にでも起こり得る、とても身近なリスクです。暖かい部屋から寒い脱衣所、そして熱いお風呂へ――この何気ない移動が、体にとっては大きな負担になっています。特に高齢者や高血圧などの持病がある人にとっては、その影響は深刻で、命に関わることもあります。しかし一方で、ヒートショックは「知っていれば防げる」事故でもあります。お湯の温度を少し下げる、動作をゆっくりにする、浴室や脱衣所を暖める。どれも特別なことではありません。寒い季節だからこそ、いつものお風呂を「安全なお風呂」に変える意識が大切です。ヒートショックを正しく知り、少しの工夫を積み重ねることが、冬を安心して過ごすことにつながります。
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