2021/09/01

看取りのガイドライン!議論が進むニュージャンル

人は必ず死にます。いつか必ず死ぬからこそ、人は今を生きて最期をどう迎えたいか考えるのではないかと思います。死ぬ瞬間を見守ることを、「看取り」といいます。2020年の年間死亡者数は137万人でした。2012年の124万人から比べると13万人増えていることになるのです。今後も日本の継続的な課題となるであろう看取りについて考えていこうと思います。

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増え続ける死亡者数と社会構造の変化

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高度経済成長期のベビーブームを経て日本は大きく発展しましたが、現在は少子高齢化が進み、総人口は減少を続けています。死亡者数が出生数を上回る状態が続き、年間死亡者数は今後さらに増加すると推計されています。厚生労働省の予測では、2025年に140万人を超え、2040年には約160万人でピークを迎え、その後も2060年まで140万人超で推移すると見込まれています。看取りの在り方は、これからの社会にとって避けて通れない課題となっています。

死亡する場所の変遷

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かつては自宅で最期を迎える人が多数でしたが、医療技術の進歩とともに病院で亡くなる人が増え、1979年を境に病院死が自宅死を上回りました。現在、日本では約8割が病院で亡くなり、自宅は約1割にとどまっています。一方で、スウェーデンやオランダでは病院、施設、自宅がほぼ均等で、フランスでも自宅死が一定割合を占めています。日本でも2007年以降、自宅での看取りは徐々に増え始めており、最期の場所を選ぶという考え方が広がりつつあります。

患者主体への転換とガイドラインの整備

医療はかつて医師主体でしたが、患者の意思を尊重する方向へと変化しています。2006年の射水市民病院の人工呼吸器取り外し事件を契機に、終末期医療の在り方が議論され、厚生労働省は「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」を策定しました。 このガイドラインでは、患者本人の意思決定を基本とし、多職種による医療ケアチームが医学的妥当性を踏まえて慎重に判断することが示されています。患者の意思が確認できる場合は十分な話し合いを行い文書化し、状況の変化に応じて見直します。意思確認ができない場合は家族による推定意思を尊重し、最善の治療方針を選択します。合意が得られない場合は専門家委員会の設置も求められています。

看取りをめぐる課題

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実際には、ガイドラインを知らない医療従事者が一定数存在し、十分に浸透していないことが課題です。また、在宅看取りやターミナルケアは診療報酬上評価されていますが、ガイドラインとの明確な連動は示されていません。患者の希望と異なる救急搬送や延命措置が行われる例もあり、意思共有の仕組み不足が問題視されています。 国民の約7割が書面による意思表示に賛成している一方、実際に行っている人は約3%にとどまります。この乖離を埋めるため、後期高齢者制度への移行時などに意思確認を行う提案もなされています。リビングウィルの普及だけでなく、かかりつけ医との日常的な対話や、意思が失われた場合の代理人制度の検討も重要とされています。

医療と介護の連携

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超高齢社会では、地域包括ケアシステムの構築が不可欠です。在宅、入院、外来、施設介護を状況に応じて選択できる体制整備が求められています。特に在宅療養中の急変時に本人の意思が共有されていないと、望まない救命措置が行われる可能性があります。介護職は急変時に救急要請を優先するため、事前の意思確認と情報共有の仕組みづくりが重要です。

まとめ

日本は今後さらに死亡者数が増加する社会を迎えます。どこで、どのように最期を迎えるかは個人の尊厳に直結する問題です。ガイドラインは整備されましたが、十分な周知と意思表示の普及、医療と介護の連携強化が不可欠です。最期の選択を支える仕組みを社会全体で整えることが、これからの超高齢社会に求められています。