2019/08/16

在宅医療を選ぶ際にチェックしておきたいメリットとデメリット

在宅医療という言葉にも市民権が与えられつつありますが、自分の最期や家族の最期をどこでどう迎えたいかを考えるきっかけの一つになっている方も多いのではないでしょうか。マスメディアでも在宅医療や訪問診療、訪問看護について特集が組まれることも多くなり、これからの日本の医療で中心的な存在になってくることがわかります。 そこで、今回は在宅療養支援診療所として訪問診療所や訪問看護ステーションを選ぶ際に事前にチェックしておきたいメリットとデメリットについて紹介していきます。ご自身や家族の方を参考にしながらメリット・デメリットを見比べてください。

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在宅医療とは何か

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在宅医療とは、療養中の方の自宅や老人ホームなどへ医療従事者が訪問し、診療や看護、療養支援を行う医療の形です。在宅医療の中には「訪問診療」と「往診」という制度があり、両者は似ているようで役割が異なります。 訪問診療は、通院が困難な方の自宅へ医師が定期的に訪問し、診療・治療・薬の処方・療養上の相談や指導を行う制度で、24時間365日体制で患者を支える仕組みです。一方、往診は突発的な病状変化に対して緊急的に訪問する医療行為を指します。訪問診療では、定期訪問中の患者の状態が不安定になった際に、緊急訪問として往診が行われることもあります。

訪問診療・訪問看護の普及状況と背景

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日本は急速な高齢化を背景に、医療の中心が「入院医療」から「在宅医療」へと移行しています。実際に、訪問診療に対応している医療機関数は、平成26年時点で23,289か所に達しており、日本の全診療所数の約20%、全病院数の約**30%**が訪問診療に対応しています。 また、全国訪問看護事業協会の資料によると、訪問看護が制度化された直後の平成5年度の指定訪問看護ステーション数は277か所でしたが、平成30年には10,418か所まで増加し、約40倍に拡大しています。 利用者数の面でも増加傾向は明らかです。訪問診療の利用者数は平成26年度で約65万人、そのうち訪問看護を利用している人は約57万人とされています。訪問看護利用者の内訳を見ると、医療保険を利用している人が約17万人、介護保険を利用している人が約40万人となっており、在宅医療のニーズが広い層に広がっていることがわかります。 これらの数値は、国の政策が入院医療から在宅医療へと明確にシフトしていることを裏付けています。

訪問診療のメリット

訪問診療の大きなメリットは、通院に伴う患者の身体的・精神的負担を軽減できる点です。外来診療では移動や待ち時間が負担になりますが、訪問診療では医療者が自宅を訪れるため、患者は移動する必要がありません。家族や介助者にとっても、付き添いのために時間を割く必要がなくなります。 また、歩行困難や医療的ケアが必要な方でも利用しやすく、24時間365日体制で緊急対応が受けられる点も安心材料です。医療保険や介護保険を利用できるため、自己負担を抑えながら療養を続けることが可能です。点滴、投薬、検査、カテーテル管理など、一般的な外来診療と同程度の医療を受けられる点も特徴です。さらに、住み慣れた環境で療養できることで、患者や家族の希望を治療方針に反映しやすく、生活の質の向上につながります。

訪問診療のデメリットと注意点

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一方で、訪問診療には制限もあります。CTやMRIなどの大型医療機器を用いた検査や、衛生環境を必要とする手術などは在宅では実施できません。精密検査が必要な場合は、連携医療機関を受診する必要があります。 また、急変時には入院医療と比べて即時対応が難しい場合があります。救急搬送時には初診扱いとなり、情報共有に時間がかかることもあります。そのため、訪問診療医や24時間対応の訪問看護と連携した体制づくりが重要です。さらに、在宅医療では家族の協力が不可欠であり、介護や日常生活のサポートによる家族の負担が大きくなる点も課題となります。

まとめ

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在宅医療は、住み慣れた環境で穏やかに療養したいという患者や家族の思いに応える医療の形として、現代のニーズに合った存在になっています。一方で、訪問診療にはできることとできないことがあり、メリットとデメリットの両面を理解したうえで選択することが重要です。 ご自身や家族の病状、生活環境を踏まえ、訪問診療で何を任せるのが適切かを考えることが、後悔のない選択につながります。今後ますます身近になる訪問診療を選ぶ際の指標として、本記事を参考にしてください。