2025/12/16
「食事中にむせることが増えた」 「飲み込むのが大変そうになっている」 高齢の家族に見られるこうした変化は、嚥下機能の低下によるものかもしれません。嚥下機能の低下は、食事の楽しみを奪うだけでなく、誤嚥性肺炎や栄養不足といった健康リスクを引き起こす可能性があります。しかし、嚥下機能低下は早期のケアや適切な対策によって予防・改善が可能です。 本記事では、嚥下機能が低下する原因や具体的な対策について解説します。
嚥下とは、口の中に入れた食べ物や飲み物を飲み込み、胃まで運ぶ一連の働きを指し、嚥下を行うための機能を嚥下機能と呼びます。 嚥下は、先行期、準備期、口腔期、咽頭期、食道期という5つの過程で構成されています。これらの過程が滞りなく行われることで、私たちは食べ物を安全に消化器官へ運ぶことができます。しかし、加齢や疾患によって嚥下機能が低下すると、この流れがスムーズにいかなくなり、むせや誤嚥のリスクが高まります。
嚥下機能の低下は、高齢者の健康や生活にさまざまな深刻な影響を及ぼします。代表的なものが誤嚥性肺炎であり、食べ物や飲み物が気道に入りやすくなることで発症します。特に高齢者では重症化しやすく、死因のひとつにもなっています。 また、飲み込みの力が弱まることで窒息のリスクが高まり、低栄養や脱水症状を引き起こす可能性もあります。さらに、薬を飲み込むことが難しくなり、適切な治療が受けられなくなる場合もあります。
嚥下機能が低下すると、水やお茶を飲んだときにむせる、食べ物が口からこぼれる、喉に詰まる感覚があるなどの症状が見られます。 また、食事に時間がかかるようになったり、柔らかいものを好むようになるなど、食事パターンにも変化が現れます。食後には咳や痰が増えたり、口腔内に汚れが残りやすくなることもあります。これらの症状が続くと、体重減少や栄養状態の悪化、誤嚥性肺炎のリスク増加、食事の楽しみの低下につながります。
嚥下機能低下の原因は、機能的原因、器質的原因、心理的原因の3つに分類されます。 機能的原因には、脳血管障害、パーキンソン病などの神経変性疾患、加齢による筋力低下、薬剤の副作用などがあります。器質的原因としては、腫瘍や炎症、手術後の障害など、嚥下に関わる器官そのものの構造的な問題が挙げられます。 さらに、うつ病やストレス、認知症などの心理的要因も嚥下機能に影響を与えることがあります。
嚥下機能は、食事を安全に行い、栄養を摂取するために欠かせない重要な働きです。しかし、加齢や病気などによって機能が低下すると、誤嚥性肺炎や栄養不足、窒息といった健康リスクが高まります。 日常的な口腔ケアや口腔体操、食事形態や環境の工夫など、その方に合った対策を継続することが大切です。食事中にむせることが増えたり、飲み込みにくさを感じたりする場合は、早めに医療機関へ相談し、適切な対応を行いましょう。
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